STEP 5:設立後の手続き|税務署・年金事務所・銀行口座・開業準備

登記が完了しても、会社設立の実務は終わりではありません。税務署、都道府県税事務所、市区町村、年金事務所への届出、法人口座開設、会計ソフト導入などを進めます。
STEP 5 会社設立完全ガイド

STEP 5:設立後の手続き|税務署・年金事務所・銀行口座・開業準備

税務署、自治体、年金事務所への届出、法人口座開設、会計ソフト導入などを進めます。

設立後の届出は「期限のある順」に片付ける

登記が完了し、履歴事項全部証明書(登記簿謄本)が取得できるようになったら、会社設立の手続きは最終段階に入ります。ただし、登記はゴールではなくスタートです。設立後には税務署・自治体・年金事務所への届出、法人口座の開設、経理体制づくりといった実務が続き、その多くに提出期限が設けられています。

ここでのポイントは、「思いついた順」ではなく「期限が早く到来する順」に片付けることです。特に青色申告の承認申請は、期限を1日でも過ぎると初年度に適用できず、後から取り返す方法がありません。まずは全体像を一覧で確認しましょう。なお、期限はいずれも目安であり、2026年7月時点の制度にもとづく記載です。実際の手続きの際は各窓口・公式サイトで最新の要件をご確認ください。

届出先書類期限(目安)
①税務署法人設立届出書設立の日から2か月以内
②税務署青色申告の承認申請書設立から3か月を経過した日と、初年度の事業年度終了の日の、いずれか早い日の前日まで(最優先)
③税務署給与支払事務所等の開設届出書事務所の開設から1か月以内
④税務署源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書随時(承認された月の翌月の支払分から適用)
⑤都道府県・市区町村法人設立届(地方自治体向け)自治体により異なる(東京23区は都税事務所のみでよいのが原則)
⑥年金事務所健康保険・厚生年金保険 新規適用届設立(適用事業所に該当した日)から5日以内が原則

表のとおり、年金事務所の「5日以内」がもっとも短い期限ですが、実務上は役員報酬の金額が決まらないと手続きが完結しないため、多少前後するケースが少なくありません。一方、青色申告の承認申請は期限を過ぎた瞬間に初年度分が確定的に失われます。迷ったら「青色申告の承認申請書を最優先で提出し、そのついでに税務署関係をまとめて出す」と覚えておくと安全です。

税務署への届出——青色申告が最優先

税務署に提出する書類は複数ありますが、実質的な重要度には大きな差があります。順に見ていきましょう。

法人設立届出書は、会社が設立されたことを税務署に知らせる基本の届出です。期限は設立から2か月以内で、定款の写しなどを添付して提出します。窓口への持参や郵送のほか、e-Taxでの電子提出も可能です。

青色申告の承認申請書が、設立後の届出の中でもっとも優先すべき1枚です。期限は「設立から3か月を経過した日」と「初年度の事業年度終了の日」のいずれか早い日の前日まで。たとえば設立初年度の事業年度が3か月に満たない場合は、期限がさらに前倒しになる点に注意が必要です。青色申告の承認を受けると、赤字(欠損金)を翌期以降10年間繰り越して将来の黒字と相殺できるほか、30万円未満の減価償却資産を一括で経費にできる特例(適用には要件があります)なども使えます。創業初年度は設備投資や広告費が先行して赤字になりやすいため、この繰越を使えるかどうかで2年目以降の税負担が大きく変わります。期限を逃すと初年度は白色申告となり、初年度赤字の10年繰越という大きなメリットを失いますので、法人設立届出書と同時に提出してしまうのが確実です。

給与支払事務所等の開設届出書は、役員報酬や給与を支払う会社が提出するもので、期限は開設から1か月以内です。社長1人の会社でも、自分に役員報酬を支払うのであれば対象になります。

源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書は、義務ではありませんが実務上ほぼ必須といえる届出です。給与から天引きした源泉所得税は原則として毎月納付ですが、給与の支給人員が常時10人未満の会社は、この特例により納付を年2回(7月10日と1月20日が目安)にまとめられます。毎月の納付事務と納付漏れのリスクを大幅に減らせるため、該当する会社は早めに提出しておきましょう。提出期限は特にありませんが、承認された月の翌月の支払分からの適用となるため、遅れるほど毎月納付の期間が長くなります。

また、税務署とは別に、都道府県と市区町村にも法人設立届の提出が必要です。法人住民税・法人事業税といった地方税のための届出で、期限や様式は自治体ごとに異なります(東京23区内に本店を置く場合は、都税事務所への提出のみでよいのが原則です)。国の税務署に出して終わりと思い込み、自治体側を忘れるケースが多いので注意してください。

社会保険——役員1人でも加入が原則

法人は、社長1人だけの会社であっても、健康保険・厚生年金保険への加入(適用)が原則として義務です。個人事業のときは国民健康保険と国民年金だった方も、法人化した時点で切り替えが必要になります。「従業員を雇っていないから関係ない」というのは、設立後によくある誤解のひとつです。

年金事務所に提出する書類は、主に次の3点です。会社としての加入を届け出る健康保険・厚生年金保険 新規適用届、役員・従業員それぞれの加入を届け出る被保険者資格取得届、そして扶養する家族がいる場合の健康保険 被扶養者(異動)届です。新規適用届の期限は設立から5日以内が原則とされていますが、添付書類として登記簿謄本が必要になるため、実際には登記完了後すみやかに、という運用になります。

ここで重要なのは、社会保険の手続きは役員報酬の金額が決まらないと完結しないという点です。保険料は報酬額(標準報酬月額)にもとづいて決まるため、資格取得届には報酬月額の記載が必要です。つまり、役員報酬の決定と社会保険の手続きは、実質的にセットで進めることになります。役員報酬は税務上、原則として設立から3か月以内に決める必要があり、いったん決めると事業年度の途中では変更しにくいルールになっています。金額の考え方は役員報酬の決め方で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。

法人口座の開設——審査に2〜4週間かかる

法人名義の銀行口座は、取引先への請求・入金、社会保険料や税金の引き落とし、そして将来の融資まで、会社のお金の流れすべての土台になります。ところが、近年は口座の不正利用防止の観点から審査が厳格化しており、申込みから開設まで2〜4週間程度(目安)かかるのが一般的です。設立直後に申し込んでも最初の取引に間に合わないことがあるため、登記が完了したらすぐに動き出しましょう。

必要書類は金融機関によって異なりますが、おおむね履歴事項全部証明書(登記簿謄本)、法人の印鑑証明書、定款の写し、代表者の本人確認書類が基本セットです。加えて、事業内容がわかる資料(ホームページ、パンフレット、取引先との契約書など)の提出を求められることが増えています。

審査で見られるのは、端的にいえば「実体のある事業かどうか」です。会社のホームページが用意されているか、固定電話や事務所があるか、事業内容と資本金のバランスが取れているか、といった点が確認されます。一般に、メガバンクは審査のハードルが高めで、ネット銀行や地方銀行・信用金庫は比較的対応が柔軟な傾向があるといわれます。まずネット銀行で口座を確保し、事業実績ができてから、融資取引を見据えてメガバンクや地域金融機関に広げるという順番も現実的な選択肢です。なお、バーチャルオフィスを本店所在地にしている場合は、審査で追加の説明を求められることがあります。詳しくは自宅住所・バーチャルオフィスで起業する場合の注意点をご覧ください。

経理体制のスタート——最初の1か月で仕組みを作る

届出と口座開設が一段落したら、経理の仕組みづくりです。ここを後回しにすると、初年度の決算直前に1年分の領収書の山と格闘することになります。設立後1か月以内をめどに、次の3点だけ整えておきましょう。

第一に、会計ソフトの導入です。クラウド会計ソフトなら、銀行口座やクレジットカードと連携して取引を自動で取り込めるため、簿記の知識が十分でなくても日々の記帳を進められます。取引が少ない設立直後こそ、もっとも学習コストの低い導入タイミングです。

第二に、会社のお金と個人のお金の分離です。事業の支払いは法人口座と法人カードに一本化し、個人の財布から立て替えた場合の精算ルールも決めておきます。公私の混在は経理の手間を増やすだけでなく、税務調査や融資審査での印象にも影響します。

第三に、設立前後の領収書の保存です。設立準備のためにかかった費用(創立費)や、設立後から営業開始までの準備費用(開業費)は、要件を満たせば繰延資産として計上し、利益が出た期に償却して経費化できます。設立前の支出だからと捨ててしまわず、日付と内容がわかる形で保管しておいてください。

この先1年間にやってくる税務・労務の期限は、創業1年目の経理・税務カレンダーで月ごとに確認できます。経理全般の進め方は経理・会計ガイドにまとめていますので、体制づくりの参考にしてください。

5つのSTEP、完走です

準備、定款、払い込み、登記、そして設立後の手続き——ここまで進めば、会社として事業を始める土台は整いました。次のテーマは、事業を軌道に乗せるための資金です。創業融資は「まだ実績がないこと」を前提に審査してもらえる、設立直後だからこそ使いやすい制度です。手元資金に余裕があるうちに、早めに検討を始めましょう。

会社設立後は、創業融資・資金調達の準備へ

会社を設立したら、法人口座、会計体制、創業計画書、資金繰り計画を早めに整えることが大切です。

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