STEP 3:資本金の払い込み|タイミング・通帳コピー・払込証明書の注意点
資本金を払い込み、通帳コピーや払込証明書を用意します。
STEP 2で定款ができたら、次はいよいよ資本金の払い込みです。このステップでやることは、実は「振り込む」「コピーを取る」「証明書を作って綴じる」の3つだけです。作業自体は半日もかかりませんが、振り込むタイミングと方法を間違えるとやり直しになり、登記のスケジュール全体が遅れてしまいます。この記事では、失敗しない順序と書類の作り方を具体的に解説します。
払い込みのタイミング——定款の後、登記の前
資本金の払い込みで最初に押さえるべきなのは「順序」です。株式会社の場合は定款の認証が終わった後に、合同会社の場合は定款を作成した日以降に払い込むのが原則です。そして、払い込みの記録がそろってから登記申請(STEP 4)へ進みます。つまり、資本金の払い込みは「定款の後、登記の前」に位置する手続きです。
この順序が前後してしまうと、その入金は「設立のための出資の払い込み」として認められないおそれがあります。定款を作る前に入金したお金は、何のための入金なのかを客観的に証明できないためです。その場合、いったん引き出して改めて振り込み直すといった対応が必要になり、二度手間になります。
| 会社形態 | 払い込みができる時期(目安) | 基準となる日付 |
|---|---|---|
| 株式会社 | 公証役場での定款認証が終わった後 | 定款認証日 |
| 合同会社 | 定款を作成した日以降(認証は不要) | 定款作成日 |
通帳に印字される振込日が、定款認証日(合同会社は定款作成日)より後になっているかを必ず確認しましょう。1日でも前だと、法務局で補正を求められる可能性があります。なお、本記事は2026年7月時点の一般的な取扱いをもとにした目安です。個別のケースは法務局や専門家にご確認ください。
どの口座に、どうやって払い込むか
「会社の口座に振り込むのでは?」と思われがちですが、設立前の会社はまだ存在していないため、法人口座を作ることができません。そこで、発起人(合同会社の場合は社員)個人名義の口座に払い込むのがルールです。発起人が複数いる場合は、代表となる発起人1名の口座にまとめて振り込むのが一般的です。
払い込みの方法にもポイントがあります。大切なのは、「誰が」「いくら」出資したかが通帳に記録として残ることです。
- 「振込」で行う——ATMや窓口、ネットバンキングから「振込」をすると、通帳や明細に振込人の氏名が印字されます。これが出資の証明になります。
- 同じ口座への「預入」は避ける——自分の口座に現金をそのまま預け入れると、残高は増えても「誰が出資したのか」が記録に残りません。自分名義の口座であっても、あえて「振込」の形をとるのが確実です。
- 発起人が複数いる場合は全員分の振込記録が必要——各発起人がそれぞれ自分の名前で、引き受けた出資額を振り込みます。1人がまとめて振り込むと、他の発起人の出資を証明できなくなります。
- ネット銀行も利用できます——通帳がない銀行でも、後述のとおり取引明細の画面を印刷すれば証明資料になります。
振込のタイミングは、発起人全員の振込が定款認証日(合同会社は定款作成日)より後にそろうように調整しましょう。振込手数料は出資額とは別にかかる点にも留意し、通帳に出資額どおりの金額が記帳されているかを確認しておくと安心です。
通帳コピーの取り方
払い込みが済んだら、その記録を書面にします。登記申請では「払い込みがあったことを証する書面」の一部として通帳のコピーを使うのが一般的で、必要なのは次の3点です。
| コピーする箇所 | 確認できる情報 |
|---|---|
| 通帳の表紙 | 銀行名・口座名義人 |
| 表紙裏(1ページ目) | 支店名・口座番号・口座名義などの口座情報 |
| 振込が記帳されたページ | 振込日・振込人の氏名・金額 |
振込が記帳されたページでは、該当する振込にマーカーや印を付けておくと、法務局の担当者にも分かりやすくなります。記帳がまだの場合は、コピーの前に必ずATMなどで記帳を済ませましょう。
ネット銀行など通帳が発行されない口座の場合は、口座名義(銀行名・支店名・口座番号・名義人)と振込明細(日付・振込人名・金額)が確認できる画面を印刷すればOKです。スマートフォンアプリしかない場合も、該当画面のスクリーンショットを印刷する方法で対応できます。
払込証明書の作り方
通帳コピーとセットで作成するのが「払込証明書(払い込みがあったことを証する書面)」です。これは設立時代表取締役(合同会社は代表社員)が作成する書類で、決まった様式はありませんが、次の事項を記載します。
| 記載事項 | 内容の例 |
|---|---|
| 払込みを受けた金額の総額 | 金300万円 |
| 払込みがあった株数 | 普通株式60株(株式会社の場合) |
| 日付 | 払込みが完了した日以降の作成日 |
| 本店所在地 | 定款・登記申請書と同一の表記 |
| 商号 | 定款どおりの正式な商号 |
| 代表者の氏名 | 設立時代表取締役の氏名 |
作成した払込証明書を表紙にして、通帳コピー3点(表紙・1ページ目・振込ページ)と一緒にホチキスで綴じれば完成です。ひな形(記載例)は法務局のウェブサイトに登記申請書の様式と併せて掲載されていますので、最新のものを確認して使うと安心です。商号や本店の表記が定款と1文字でも違うと補正の原因になりますので、転記ミスには特に注意しましょう。なお、株式会社の場合、登記申請をオンラインで行うときは通帳コピーの代わりにPDF化した書面を添付する方法もありますが、初めての設立であれば、紙で綴じて法務局の窓口や郵送で提出する方法が分かりやすくおすすめです。
ここまでの流れを整理すると、「定款認証 → 発起人の個人口座へ振込 → 記帳 → 通帳3点コピー → 払込証明書を作成 → ホチキスで綴じる」という順番になります。この綴じた書類一式が、STEP 4 の登記申請で添付書類の一つになります。
よくある疑問
資本金はいつから使えますか?
払い込んだ資本金は、通帳コピーを取った後であれば口座から動かすこと自体は可能で、登記申請後は設立準備・事業のための資金として使用できます。ただし、使い道の分からないお金があると後の会計処理や税務で困りますので、領収書を保管し、支出の記録を必ず残しておきましょう。設立後に法人口座ができたら、残りの資金は速やかに法人口座へ移すのが基本です。
「見せ金」はなぜダメなのですか?
見せ金とは、一時的にお金を借りて資本金を払い込み、登記が終わったらすぐに引き出して返すような行為です。これは払込みを仮装するものとして違法とされ、発覚すれば会社法上の責任を問われるおそれがあります。また、創業融資の審査では通帳の履歴が確認されるため、見せ金が疑われると審査上も致命的です。資本金は実態のある自己資金で用意しましょう。自己資金と融資の関係は創業融資ガイドで詳しく解説しています。
現金以外のもの(現物出資)を資本金にできますか?
パソコンや自動車などの「モノ」で出資する現物出資も可能です。総額500万円以下であれば裁判所が選任する検査役の調査は不要とされていますが、定款への記載や調査報告書・財産引継書の作成など、金銭出資にはない手続きが別途必要になります。手間とリスクを考えると、金額が小さいうちは金銭出資のみとするのが無難です。現物出資を使いたい場合は、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
「払込証明書と通帳コピーがホチキスで綴じてある状態」になったら、このステップは完了です。振込日が定款認証日(合同会社は定款作成日)より後になっているか、発起人全員分の振込記録がそろっているかを最後にもう一度確認して、STEP 4 の登記申請へ進みましょう。
このガイドの手順(準備・定款・払込・登記・設立後の届出)を、全29項目のチェックリストにまとめました。印刷して進捗管理にお使いください。メール登録で全4資料を受け取れます。
資料を無料で受け取る