STEP 2:定款の作成と認証|電子定款・絶対的記載事項・公証役場の基本

定款は会社の基本ルールを定める書類です。株式会社では原則として公証役場での認証が必要になります。電子定款を利用すると、印紙代を抑えられる場合があります。
STEP 2 会社設立完全ガイド

STEP 2:定款の作成と認証|電子定款・絶対的記載事項・公証役場の基本

会社の基本ルールである定款を作成し、株式会社では公証役場での認証を確認します。

定款とは——会社のルールブック

定款(ていかん)とは、会社の目的・組織・運営に関する基本ルールを定めた文書で、「会社の憲法」「会社のルールブック」とも呼ばれます。会社設立の際に発起人(合同会社では社員になる人)が最初に作成する定款を「原始定款」といい、株式会社の場合は公証人の認証を受けて初めて効力が生じます。

定款に書く内容の多くは、STEP1(設立前の準備)で決めた項目をそのまま落とし込む作業です。商号・事業目的・本店所在地・資本金・事業年度・役員構成など、STEP1の決定事項が揺れていると定款も作り直しになります。逆にいえば、STEP1がしっかり固まっていれば、定款の作成自体はテンプレートや作成サービスを使って半日〜1日で形にできます。

また、定款はSTEP4の登記申請の添付書類になるだけでなく、設立後も法人口座の開設や創業融資の審査などさまざまな場面で提出を求められます。「登記のためだけの書類」ではなく、会社の一生に付き合う基本文書として丁寧に作りましょう。

記載事項は3種類——絶対的・相対的・任意的

定款に記載する内容は、法律上の効果によって次の3種類に分かれます。この区別を押さえると、テンプレートのどこが「絶対に外せない部分」なのかが見えてきます。

種類意味代表例
絶対的記載事項必ず記載が必要。1つでも欠けると定款自体が無効になります。①目的 ②商号 ③本店所在地 ④設立に際して出資される財産の価額(またはその最低額) ⑤発起人の氏名または名称と住所
相対的記載事項記載しなくても定款は有効ですが、定款に書かない限りその効力が認められません。現物出資、株式の譲渡制限、取締役の任期の伸長、財産引受け など
任意的記載事項記載してもしなくてもよい事項。社内ルールを明確にするために記載します。事業年度、役員の人数、株主総会の招集時期 など

特に注意したいのが絶対的記載事項です。5つのうち1つでも漏れると定款全体が無効となり、認証も登記もできません。また、相対的記載事項の代表である「株式の譲渡制限」は、家族経営や少人数の会社ではほぼ必須の規定です。書き忘れると株式を自由に譲渡できる会社になってしまい、役員任期の扱いなども変わるため、テンプレートから安易に削除しないよう注意してください。

あわせて悩みやすいのが「目的」の書き方です。実際に行う事業を具体的に列挙したうえで、末尾に「前各号に附帯又は関連する一切の事業」という一文を入れるのが定番の形です。将来手がける可能性のある事業もあらかじめ入れておくと、あとから目的変更の登記(登録免許税3万円・目安)をする手間と費用を省けます。ただし、あまりに脈絡のない目的を並べると「何の会社か分からない」と見られ、融資審査や取引先の信用調査でマイナスに働くこともあるため、10個前後までを目安に絞り込むのがおすすめです。

電子定款と紙の定款——印紙代4万円の違い

定款には、紙で作成する方法とPDFなどの電子データで作成する方法(電子定款)があります。最大の違いは収入印紙代です。紙の定款は課税文書にあたるため収入印紙4万円の貼付が必要ですが、電子定款は印紙税の対象外のため印紙代がかかりません(目安・2026年7月時点)。

方式印紙代必要な準備
紙の定款収入印紙4万円が必要特別な機材は不要。製本して発起人が押印します。
電子定款(自分で作成)不要マイナンバーカード、ICカードリーダー、電子署名用ソフトなどの環境整備が必要です。
電子定款(サービス・専門家経由)不要freee会社設立などの無料作成サービスを使うか、司法書士・行政書士に依頼して電子化します。

「電子定款なら4万円お得」とよく言われますが、電子署名の環境を自力で一から揃えると、機器やソフトの費用と手間がかかり、1回きりの設立ではかえって割高になることもあります。実務的には、freee会社設立・マネーフォワード会社設立といった無料の定款作成サービスを利用するか、専門家に依頼して電子定款にしてもらうのが現実的な選択肢です。専門家報酬を支払っても、印紙代4万円が浮く分だけ実質負担は小さくなるケースが多いでしょう。

なお、印紙代のほかにも違いがあります。紙の定款は同じものを複数通作成して製本・押印する手間がかかる一方、電子定款はPDFデータで完結し、認証後の保管や再利用もしやすいのがメリットです。これから会計や税務の届出もクラウドで進めていくなら、定款も最初から電子でそろえておくと管理が楽になります。

【株式会社のみ】公証役場での認証の流れ

株式会社の定款は、公証人の認証を受けて初めて効力をもちます。認証を受けられるのは、本店所在地と同じ都道府県内の公証役場です。全国どこの公証役場でもよいわけではないため、まず管轄を確認しましょう。

一般的な流れは次のとおりです。

  • ①管轄の公証役場を調べ、電話やメールで連絡する
  • ②定款の案文をメール等で送り、公証人の事前チェックを受ける(誤りはこの段階で修正します)
  • ③認証日を予約し、必要書類(発起人の印鑑証明書など)を準備する
  • ④当日、公証役場で認証を受け、手数料を納めて謄本を受け取る

認証当日の持ち物の目安は、定款(紙の場合は公証役場保管用・会社保管用・登記申請用の3通)、発起人全員の印鑑証明書(発行後3か月以内)と実印、本人確認書類、代理人が行く場合は委任状です。また、会社設立時の定款認証では「実質的支配者となるべき者の申告書」の提出も必要です。事前チェックの際に公証役場から必要書類の案内がありますので、指示に沿って準備すれば大丈夫です。

認証手数料は資本金の額に応じて変わり、目安として3万〜5万円、これに謄本代が数千円加わります(目安・2026年7月時点。最新の金額は管轄の公証役場でご確認ください)。事前チェックから認証完了まで、余裕をみて1〜2週間程度を見込んでおくと安心です。

合同会社は認証不要です

定款認証が必要なのは株式会社だけです。合同会社は定款を作成すれば足り、公証役場での認証手続きと認証手数料をまるごとスキップできます。設立コストと手間を抑えたい方が合同会社を選ぶ大きな理由の一つです。

つまずきやすいポイント

定款作成では、次のようなミスが繰り返し起きています。いずれも事前に知っていれば防げるものばかりです。

  • 目的の文言が許認可の要件を満たさない——建設業・介護事業・人材派遣・古物商など許認可が必要な事業では、行政が求める文言が目的に入っていないと許認可申請が通りません。予定している事業の許認可要件を先に確認し、必要な文言をそのまま目的に盛り込みましょう。
  • 発起人の印鑑証明書の期限切れ——認証時に提出する印鑑証明書は、発行後3か月以内のものが求められるのが原則です。早く取りすぎて期限が切れる、逆に直前で取得が間に合わない、どちらのパターンも起こりがちです。
  • 商号のフリガナ・符号の誤り——商号に使える符号(「&」「’」「・」など)にはルールがあります。定款・印鑑証明書・登記申請書で商号の表記が一字でも食い違うと、手続きが止まってしまいます。
  • 認証後に内容を変えたくなる——認証を受けた定款は原則としてあとから修正できず、誤りがあれば作り直して再認証(手数料も再度発生)となるのが基本です。案文チェックの段階で徹底的に確認しましょう。
  • 本店所在地を番地まで書いてしまう——定款上の本店所在地は「東京都新宿区」のように最小行政区画までの記載で足ります。番地まで書き込むと、同じ市区内の引っ越しでも定款変更の手続きが必要になるため、あえて最小限にとどめるのが実務の定番です。

定款の保管と使い道

認証が終わったら、定款の謄本(電子定款の場合は「同一の情報の提供」として交付される書面)とPDFデータを必ず手元に保管してください。定款は設立登記のためだけの書類ではなく、設立後も次のような場面で繰り返し提出を求められます。

  • 法人口座の開設(ほとんどの銀行で提出が必要です)
  • 日本政策金融公庫や信用保証協会付き融資など、創業融資の申し込み
  • 許認可の申請(建設業許可・古物商許可など)
  • 補助金・助成金の申請や、大手企業との取引口座の開設

特に創業融資では、定款は登記事項証明書とセットで定番の提出書類です。詳しくは融資の必要書類チェックリストで全体像を確認してください。紙の謄本は原本を大切に保管しつつ、スキャンしたPDFをクラウドにも保存しておくと、提出のたびに慌てずに済みます。

なお、定款は設立後も株主総会の特別決議(合同会社では原則として総社員の同意)によって変更できますが、その都度、議事録の作成や、登記事項に関わる場合は変更登記の費用がかかります。設立時に将来を見据えて作り込んでおくほど、後のメンテナンスは楽になります。

STEP2完了の目安

認証済みの定款(合同会社の場合は作成済みの定款)が手元にある状態になれば、STEP2は完了です。次のSTEP3では、この定款に記載した出資額を実際に払い込みます。

会社設立後は、創業融資・資金調達の準備へ

会社を設立したら、法人口座、会計体制、創業計画書、資金繰り計画を早めに整えることが大切です。

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