STEP 1:設立前の準備|株式会社と合同会社・資本金・会社名・事業目的の決め方

会社設立の最初の段階では、会社形態、商号、所在地、資本金、事業目的、役員構成などを決めます。ここが曖昧なまま進めると、定款や登記書類の作成で手戻りが起きやすくなります。
STEP 5 会社設立完全ガイド

STEP 5:設立後の手続き|税務署・年金事務所・銀行口座・開業準備

税務署、自治体、年金事務所への届出、法人口座開設、会計ソフト導入などを進めます。

会社設立の準備で最も大切なのは、登記申請の手続きそのものではなく「設立前にどこまで決め切れているか」です。このSTEP1では、会社形態・商号(会社名)・本店所在地・事業目的・資本金・発起人と役員構成・決算期、そして会社の印鑑という、定款作成(STEP2)に入る前に確定しておくべき項目を順番に解説します。ここで決めた内容はそのまま定款と登記書類に反映されるため、一つずつ丁寧に検討していきましょう。

会社形態を決める——株式会社と合同会社の比較

最初に決めるのは会社の形態です。現在、新しく設立される会社のほとんどは「株式会社」か「合同会社」のどちらかです。両者は設立費用・社会的信用・組織運営の自由度に違いがあり、事業の性質によって向き不向きがあります。

比較項目株式会社合同会社
設立費用の目安(2026年7月時点)定款認証の手数料+登録免許税で15万円〜が目安(電子定款の場合。紙の定款では印紙代4万円が別途かかります)登録免許税6万円〜が目安。定款の認証手続きは不要です
社会的信用知名度が高く、取引先・金融機関・採用の場面で説明が不要。法人格として最も広く受け入れられています近年は大手企業にも採用例があり浸透してきましたが、業種や取引先によっては株式会社より説明が必要な場面もあります
利益配分・機関設計の自由度原則として出資比率に応じた配当。株主総会や取締役など機関設計に会社法上のルールがあります出資比率にかかわらず定款で利益配分を自由に設計できます。機関設計もシンプルで、運営の自由度が高いのが特徴です
向くケース企業間取引が中心の事業、採用を強化したい場合、将来の増資・事業拡大を視野に入れる場合設立コストを抑えたい場合、個人事業の法人化、家族経営、資産管理会社など対外取引が限定的な場合

迷ったときの判断軸はシンプルです。取引先や金融機関など対外的な信用を重視するなら株式会社、設立コストと運営の自由度を優先するなら合同会社が基本の選び方です。なお、合同会社から株式会社への組織変更は後からでも可能ですが、別途費用と手続きがかかるため、対外取引の拡大が見えているなら最初から株式会社を選ぶほうがスムーズです。

商号(会社名)のルールと決め方

商号(会社名)には法律上のルールがあります。まず、使える文字は漢字・ひらがな・カタカナ・ローマ字(大文字と小文字)・アラビア数字のほか、「&」「’」「,」「-」「.」「・」の符号に限られます。符号は原則として字句を区切る目的でのみ使え、商号の先頭や末尾には使えないものがある点に注意してください。

「株式会社」を社名の前に付けるか(前株)後に付けるか(後株)は自由で、法律上の違いはありません。呼びやすさや請求書・ロゴでの見え方で決めて問題ありませんが、登記後の変更には登録免許税がかかるため、最初に決め切っておきましょう。

法律上の制限として、同一の住所に同一の商号の会社は登記できません。また、法律で禁止されていなくても、同業で紛らわしい社名は不正競争防止法や商標権のトラブルにつながるおそれがあります。候補が決まったら、法務局の登記情報提供サービスや国税庁の法人番号公表サイトで、同一・類似の商号がないかを確認しておくと安心です。

あわせて確認したいのが、ホームページ用のドメインが取得できるか、そして商標登録の有無です。社名でドメインが取れない、あるいは他社の登録商標と重なっていると、後からブランドを変更せざるを得なくなることがあります。商号・ドメイン・商標の3点は同じタイミングでまとめて確認するのがおすすめです。

本店所在地の決め方

本店所在地は登記簿に記載される会社の住所です。自宅・賃貸オフィス・バーチャルオフィスのいずれでも登記は可能ですが、それぞれ確認すべきポイントがあります。

自宅を本店にする場合、持ち家であれば大きな問題は起きにくい一方、賃貸住宅では賃貸借契約書やマンションの管理規約で「事業利用の可否」を必ず確認してください。居住専用と定められた物件で無断登記すると、契約違反を指摘されるリスクがあります。また、登記簿は誰でも取得できるため、自宅住所が公開される点も考慮が必要です。

自宅住所を公開したくない場合や、都心の住所を使いたい場合は、バーチャルオフィスも有力な選択肢です。選び方のポイントや注意点はバーチャルオフィスの選び方で詳しく解説しています。

なお、本店をどこに置いても登記の費用自体は変わりません。変わるのは、許認可の要件(業種によっては独立した事務所スペースが必要)、法人口座の審査での見え方、そして創業助成金・制度融資などの自治体要件です。自治体の支援策は「その市区町村に本店があること」を条件とするものが多いため、使いたい制度がある場合は所在地を決める前に要件を確認しておきましょう。

事業目的の書き方

事業目的は「この会社が何の事業を行うか」を定款と登記簿に記載するものです。会社は原則として、ここに書いた目的の範囲内で事業を行うことになるため、いま行う事業だけでなく、将来行う可能性のある事業も含めて書いておくのが基本です。目的の追加・変更には登録免許税がかかるため、最初に幅を持たせておくほうが経済的です。

ただし、許認可が必要な事業(建設業、人材紹介業、古物営業、飲食店営業など)を行う場合は注意が必要です。許認可の審査では「事業目的に所定の文言が入っているか」が確認されるため、監督官庁や行政書士に確認のうえ、要件を満たす文言で記載してください。文言が不十分だと、設立後に目的変更登記をやり直すことになりかねません。

数の目安は5〜10個程度です。多すぎると「何の会社かわからない」という印象を与え、法人口座の審査や融資でマイナスに働くことがあります。実際に行う事業を軸に、関連する事業を加える形で整理しましょう。最後の項目には「前各号に附帯又は関連する一切の事業」という一文を入れておくのが実務上の定番で、これにより記載した事業に付随する活動を広くカバーできます。

資本金の決め方

資本金は法律上1円でも会社を設立できます。しかし、実務では資本金は「会社の体力」を示す数字として、取引先・銀行・行政から見られます。金額を決める際は次の3つの観点で考えましょう。

第一に、当面の運転資金です。設立直後は売上が入金されるまでに時間がかかるため、家賃・仕入・人件費など3〜6か月分の運転資金を資本金として用意しておくのが目安です。第二に、許認可の財産要件です。たとえば建設業許可や人材派遣業など、一定の資産額や資本金額が要件となる業種があります。該当する場合は要件額を満たす資本金を設定してください。第三に、融資での見え方です。日本政策金融公庫などの創業融資では、資本金として払い込んだお金はご自身で準備した自己資金として評価されるのが一般的で、自己資金の額は融資額や審査に影響します。

資本金1,000万円のライン(目安・2026年7月時点)

資本金が1,000万円未満の会社は、消費税の納税義務の判定において設立当初の期間で有利な取り扱いを受けられる場合があります。ただし、売上規模・インボイス登録の要否・特定期間の判定など条件によって結論が変わるため、資本金を決める前に税理士に確認することをおすすめします。

発起人・役員構成と決算期を決める

発起人とは、会社設立の手続きを行い、資本金を出資する人のことです。発起人は1人でも問題なく、1人が発起人と代表取締役(合同会社では代表社員)を兼ねる「ひとり会社」も一般的です。複数人で出資する場合は、出資比率がそのまま議決権の比率になるため、経営の主導権を誰が持つのかを設立前に話し合っておきましょう。

決算期(事業年度の末日)も定款で定める項目です。3月決算にこだわる必要はなく、次の2つの考え方で自由に決められます。ひとつは繁忙期を避けること。決算作業と本業の繁忙期が重なると負担が大きいため、業務が落ち着く月を決算月にするのが実務的です。もうひとつは設立日からできるだけ長く取ること。第1期を最長(約1年)に設定すると、決算・申告の回数を減らせます。たとえば2026年9月設立なら、8月末決算にすると第1期が最も長くなります。

会社の印鑑を準備する

登記申請までに、会社の印鑑を準備しておきましょう。一般的に作成するのは次の3点セットです。

  • 実印(代表者印)——法務局に届け出る会社の正式な印鑑。契約書など重要書類に使用します
  • 銀行印——法人口座の開設・銀行取引に使用します。実印との使い分けでリスクを減らせます
  • 角印(社印)——請求書や見積書など日常の書類に使用します

商号が確定しないと印鑑は発注できないため、商号決定後すぐに手配するとスムーズです。作成には数日かかることもあるので、余裕を持って準備してください。なお、実印の法務局への届出(印鑑届書の提出)は、登記申請と同時に行います。詳しくはSTEP4で解説します。

STEP1完了の目安

会社形態・商号・本店所在地・事業目的・資本金・発起人と役員構成・決算期がすべて決まり、定款(STEP2)に書く内容がすべて決まっている状態になればSTEP1は完了です。次のステップでは、ここで決めた内容を定款という書面に落とし込み、認証を受けます。

会社設立後は、創業融資・資金調達の準備へ

会社を設立したら、法人口座、会計体制、創業計画書、資金繰り計画を早めに整えることが大切です。

融資・資金調達ガイドを見る 創業1年目の税務カレンダーを見る

FREE DOWNLOAD会社設立5STEP チェックリスト(無料)

このガイドの手順(準備・定款・払込・登記・設立後の届出)を、全29項目のチェックリストにまとめました。印刷して進捗管理にお使いください。メール登録で全4資料を受け取れます。

資料を無料で受け取る

→ 自分のケースで整理したい方は無料診断へ