【BtoB】実績ゼロから最初の商談を勝ち取る営業術
実績が少ない創業初期に、紹介、リスト営業、提案資料で最初の商談を作る方法を解説します。
実績ゼロの創業者が戦う場所を間違えないこと
創業直後のBtoB営業で最も多い失敗は、大手や実績豊富な競合と同じ土俵で戦ってしまうことです。コンペや相見積もりの場では、発注側は「実績」と「価格」で各社を比較します。実績ゼロの会社がここに飛び込むと、値引き以外の勝ち筋がなくなり、消耗するだけです。
創業期に勝てる土俵は2つあります。1つ目は「関係性」です。あなた個人を知っていて、人柄や仕事ぶりをすでに信頼している相手には、実績表は必要ありません。2つ目は「専門特化」です。「○○業界の△△に限れば、この人が一番詳しい」と言える領域を1つ作れば、大手の総合力と比較されずに済みます。
たとえば「経理代行」で大手と正面から競うのではなく、「建設業の原価管理に強い経理代行」「飲食多店舗展開の月次を5営業日で締める経理代行」のように絞り込むイメージです。市場は狭くなりますが、その狭い市場では第一想起を取れます。創業期に必要な顧客数はせいぜい数社〜数十社ですから、狭さは問題になりません。
そして最初の10件については、営業手法の巧拙よりも接点の数がものを言います。トークを磨き込むより先に、会える人・話せる人の数を増やすことに時間を使いましょう。10回の商談練習より、10人との名刺交換と10通の近況報告メールのほうが、最初の受注には近道です。
最初の顧客は「知っている人」から始まる
実績ゼロの段階では、広告やテレアポよりも「すでにあなたを知っている人」からの受注が圧倒的に早く、確度も高くなります。まずは自分が持っている接点を棚卸しし、アプローチの優先順位を付けましょう。接点ごとの特徴は次のとおりです。
| 接点 | アプローチ | 期待度 |
|---|---|---|
| 前職の取引先 | 独立の挨拶を兼ねて近況を報告し、困りごとを聞く | 高(ただし競業避止義務・守秘義務に触れないか、退職時の契約を必ず確認) |
| 同僚・知人の紹介 | 事業内容を1枚で説明できる資料を渡し、紹介を依頼する | 高 |
| 異業種交流会・商工会議所 | 売り込まず、まず相手の事業を聞く。名刺交換後1週間以内に個別連絡 | 中 |
| SNS・ブログでの専門性発信 | 週1本でも専門分野の情報を発信し続ける | 中(時間はかかるが指名につながる) |
紹介を依頼するときは、頼み方が結果を分けます。「誰か紹介してください」では、相手は誰を紹介すべきか思い浮かびません。「請求業務が手作業で回らなくなっている、従業員10名前後の建設業の方はいませんか」のように、困りごとと業種・規模を具体化して伝えると、相手の頭に特定の顔が浮かび、紹介につながります。
商談の型——売り込まず、聞き切る
最初の商談で自社サービスの説明から入るのは避けましょう。時間配分の目安はヒアリング7:提案3です。聞く順番は次の4段階が基本です。
①現状(今どうやっているか)→②課題(何に困っているか)→③理想(本当はどうしたいか)→④障害(なぜ今できていないか)。具体的には「今、この業務はどなたがどのように回していますか」「その中で一番時間を取られているのはどこですか」「理想を言えば、どういう状態になれば十分ですか」「これまで手を付けられなかったのは何がネックでしたか」といった質問を順に重ねます。この順に聞き切ると、提案は「④の障害を取り除く方法」として自然に組み立てられ、的外れな売り込みになりません。
また、その場で即答して安請け合いする必要はありません。「持ち帰って、御社の状況に合わせた提案書を3営業日以内にお送りします」と締めるほうが、結果的に受注率は上がります。小さな会社の武器は、大手にはない速度と丁寧さです。翌日に丁寧な提案書が届くだけで、十分な差別化になります。
金額を提示するときは、必ず根拠とセットにします。「この作業に○時間、この範囲までを含んで△△円」と工数・範囲を明示すれば、相手が社内で金額の妥当性を説明でき、値引き交渉にもなりにくくなります。
実績ゼロの信頼を補う4つの方法
とはいえ、関係性の薄い相手との商談では「実績はありますか」と必ず聞かれます。ここで言葉を濁すのではなく、実績の不足を仕組みで補う準備を先にしておきます。方法は次の4つです。
①小さく請ける。いきなり年間契約を提案せず、お試し価格の初回プランや1か月のスモールスタートを用意します。相手の意思決定のハードルが下がり、自社の実績も積めます。
②成果物サンプル・ポートフォリオを見せる。受注実績がなくても、架空の題材やモニター案件で「発注するとこれが届く」という現物を示せるようにします。
③専門性を発信する。記事の執筆、セミナー登壇、関連資格の取得は「この分野を体系的に理解している」ことの証明として機能します。
④リスクを引き受ける。返金保証や修正保証など、失敗したときのリスクを自社側で引き受ける条件を提示すると、実績の不足を補えます。
「安くしますから」は信頼の代わりになりません。安さで取った顧客は安さで離れ、あとから価格を戻す交渉には大きな労力がかかります。下げるべきは価格ではなく、①〜④のように相手のリスクとハードルのほうです。
断られてからが営業——パイプライン管理
BtoBの営業は、一度断られて終わりではありません。「今は不要」の多くは「時期が違う」だけです。予算の年度替わり、担当者の交代、繁忙期の終わりなどで状況は変わります。
そこで、商談した相手・名刺交換した相手を見込み客リストとして管理します。項目は「会社名・担当者・現在の状況・次のアクション・再接触の時期」の5つで十分です。たとえば「A社/総務部長/予算がなく見送り/事例資料を送付/10月(来期予算の検討時期)」という1行を、商談のたびに追加していくだけです。
大切なのは、断られた相手にも「3か月後に近況をうかがう連絡をする」といった再接触ルールをあらかじめ決めておき、感情を挟まず機械的に実行することです。連絡の内容は売り込みではなく、「その後、○○の件はいかがですか」という近況うかがいと、相手の役に立つ情報の提供で構いません。この積み重ねがあるかどうかで、半年後の商談数は大きく変わります。
管理は、最初はスプレッドシートで十分です。見込み客が50件を超えて更新が追いつかなくなってきたら、顧客管理ツールの導入を検討しましょう。選び方は創業期のITツールガイドで解説しています。
受注後こそ次の商談の種
初受注はゴールではなく、2件目・3件目の起点です。BtoBでは新規開拓よりも、既存顧客からの追加発注と紹介のほうがはるかに低コストで確度も高いため、受注後の動きが次の売上を決めます。やるべきことは3つあります。
1つ目は、請求・入金条件の取り決めです。金額だけ合意して締め日・支払日を曖昧にすると、納品したのに入金が2〜3か月先、ということが起こります。契約時に「月末締め・翌月末払い」など支払条件を必ず書面で確認しましょう。回収サイトの長さは創業期の資金繰りを直接左右します。詳しくは資金繰り管理の記事を確認してください。
2つ目は、納品後のフォローです。納めて終わりにせず、1〜2週間後に「使ってみていかがですか」と一報を入れます。この一手間が満足度を引き上げ、次の紹介を生みます。
3つ目は、事例化の許可です。「実績としてお名前と事例を掲載してよいですか」と依頼し、了承を得られれば、次の商談で提示できる実績が1件増えます。実績ゼロの期間は、この積み重ねで最短で終わらせることができます。
創業準備で迷ったら、次の実務も確認しましょう
創業辞書では、創業期の経営者が判断しやすい実務情報を整理しています。必要に応じて、税理士・司法書士・社会保険労務士など適切な専門家と連携しながら確認することをおすすめします。
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